あの夜、月にそっと話しかけた

プロフィール
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足音も遠のいた薄暗い路地裏で、一匹の猫が北風に耐えるように静かに丸まっている。

私はシャッターを半分閉めたままの店内、厨房の片隅で「はぁー」とそっとため息をつく——そんな場面から、私の物語は静かに始まります。

両親が営んでいた飲食店。父の急な他界をきっかけに、家業を継ぐことになります。けれど、正直に言えば、接客が得意でもなければ、飲食に強い思い入れがあったわけでもなく…ただ「やらなきゃいけないから」という理由だけで、こなしていく毎日。

笑顔も、言葉も、すべてがどこかぎこちない。自分でもわかるくらい楽しくなくて、その空気は店内にもお客様にも伝わっていたと思います。

案の定、売り上げは徐々に落ち込み、スタッフも離れ、気がつけば、店も心もボロボロに。プライベートも同じ。仕事が終われば寝るだけ。友達と呼べる人もいつの間にかいなくなっていました。

そんなある日、父の葬儀で少しだけお話しさせていただいた親戚の叔母が、お店へ訪ねてきてくれます。そこで何気なく話してくれた「月の満ち欠けって、心にも影響するのよ」という言葉が、なぜか妙に耳に残るのです。

「まさか、そんなことで何か変わるわけないじゃない」

そう思いながらも、その夜から満月と新月を意識して、ノートを開く私。半信半疑どころか、9割疑っていた。でも、書くだけならタダだし、誰にも見られないし…そんな気持ちで始めたのが最初でした。

案の定、数週間経っても、何も変わらない。それでも、なぜかやめる気にはならなくて。ほんの少しだけ、心が整理されるような感覚があって、それを頼りに続けていきます。

やがて、月のリズムに合わせて行動するという考え方があることを知り、本を読んだり、小さなセミナーに足を運んだりするように。朝の静かな時間に、今日の月齢をチェックしながらコーヒーを飲む。そんな小さな習慣が、だんだんと私の生活の軸になっていきます。

すると、不思議なことに少しずつ周りが変わり始めます。

以前なら雑に感じていたお客様との会話が、なぜか楽しくなっていたり、ふとした瞬間に「今日、いい空気だな」と思えるようになったり。気がつけば、売り上げも回復し、今では父の頃と比べて2倍以上に。なにより、心が軽いんです。あんなに閉ざしていた世界が、少しずつ開いていく感覚。毎日が、なんだか楽しい。

今、私はとても幸せです。無理して笑う必要もなく、頑張りすぎなくても大丈夫な毎日。月のリズムとともに過ごす時間は、自分と丁寧に向き合う時間でもあります。

そんな中、ふと、気づいたんです。昔の私のように、忙しさに追われて心のバランスを崩している人が、きっとたくさんいるって。がんばり屋さんで、でもちょっと不器用で、本当は心が疲れていることにすら気づいていないような人たちがいるって。そんな人に、そっと寄り添いたい。そんな思いが湧いてきました。

そんなきっかけで、このブログを書き始めました。

「月の満ち欠けなんて…」と思っていたあの頃の自分に、そっと言ってあげたい。「大丈夫だよ、あなたもきっと幸せになれるよ」って。

そして、このブログが、あなたの心に小さな月明かりを灯せたら・・・。それが、今の私の願いです。

 

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